夏の生活リズムの乱れに負けない、ウェルネス習慣の続け方
夏は、せっかく育てた良い習慣が静かに崩れていく季節です。旅行、遅くまで明るい夕暮れ、急なお誘い、いつもと違う時間の食事。何か月もかけて積み上げてきた生活リズムが、あちこちから引っぱられます。ようやく朝の呼吸法や毎日の気分チェックが定着してきた人ほど、不安は切実です。この3か月のバタバタで、全部台無しになってしまうのでは、と。
安心してください。習慣は、思っているよりずっと丈夫です。ただし、習慣を支えている本当の仕組みを知っておくことが条件になります。この記事では、なぜ夏に習慣が崩れやすいのかを研究をもとに整理したうえで、完璧を目指さなくてもウェルネス習慣を夏の乱れから守れる、小さくて実践的な工夫をお伝えします。
なぜ夏は、ほかの季節より習慣が崩れやすいのか
習慣を動かしているのは意志力ではありません。「状況」です。Wendy Wood(習慣研究の第一人者)らの2002年の研究では、日々の行動のおよそ43%が習慣的なもので、毎回あらためて決めているのではなく、同じ状況の中で繰り返されているだけだとわかりました。同じ時間に起きて、同じ部屋で、同じきっかけに手を伸ばす。そのとき脳は、ほとんど自動でその行動を実行しています。
夏は、そのきっかけを片っ端から取り払ってしまいます。寝る時間は遅くなり、食事の時間はずれ、目が覚める場所も変わる。ときには時差まであります。家での朝7時の散歩は、旅先では9時の散歩に。夜のリラックスタイムは、友人と過ごす明るく長い夕暮れに押し出されてしまう。習慣を支えていた状況が消えると、習慣は引き金を失います。夏がこんなに不安定に感じられるのは、やる気が足りないからではなく、これが理由なのです。
生活が乱れたとき、習慣には実際なにが起きているのか
具体的な工夫の前に、ひとつ心に留めておきたい研究結果があります。Phillippa Lallyらの2010年の研究は、日常の行動が自動的に感じられるまでの日数を追跡し、中央値は66日、人と行動によって18〜254日と大きな幅があることを明らかにしました。ここから言えることは2つあります。
まず、習慣の定着には、よく聞く「21日説」よりずっと時間がかかるということ。始めて数週間の習慣は、夏を迎える時点でまだ壊れやすい状態です。そしてもうひとつ、こちらは気持ちが軽くなる発見です。データの中では、1日抜けたくらいでは進捗は崩れていませんでした。移動日には朝の散歩を飛ばすでしょう。電波の届かないキャンプ場では気分の記録もできないでしょう。それは夏というもので、失敗ではありません。大事なのは抜けるかどうかではなく、どれだけ早く戻ってこられるかです。
夏に乱される前に、習慣を小さくしておく
習慣を守るいちばんのタイミングは、乱れが来る前です。やることを小さく、具体的にしておきましょう。
Peter GollwitzerとPaschal Sheeranの2006年の研究は、「実行意図」と呼ばれる、いつ・どう行動するかをあらかじめ決めておくシンプルなif-thenプラン(もし〜したら、〜する)を検証しました。効果量は中〜大(d = 0.65)。これほど手間のかからないテクニックとしては、かなり大きな効果です。「毎日瞑想する」ではなく、「目覚ましが鳴ったら、立ち上がる前にゆっくり3回呼吸する」と決めておく。きっかけは具体的に、行動はごく小さく、です。
BJ Foggはこれを「タイニー・ハビット(小さな習慣)」と呼び、新しい行動を、すでに無意識にやっている日課にくっつけることを勧めています。2分版でもちゃんとカウントされます。20分の日記は、その日のことを3行書くだけに。15分の瞑想は、最初のコーヒーの前の深呼吸1回に。「こんなに小さくて意味があるの?」と思うくらいがちょうどよく、だからこそ乱れた1週間を生き延びられるのです。いつもの生活が戻ってくるまで、鎖をつないでおいてくれます。
夏に奪われたきっかけを、記録で取り戻す
環境がきっかけをくれなくなったら、自分で用意すればいいのです。Benjamin Harkinらの2016年のレビューは、数十年分の研究を分析し、目標への進み具合を記録するだけで達成の確率が確実に上がることを示しました。「気づく」という行為そのものが、行動を後押ししてくれるのです。
夏に習慣トラッカーを使う理由は、まさにここにあります。できなかった日に自分を責めるためではなく、旅行や夜更かしに奪われた「外からのきっかけ」の代わりになってもらうためです。これは特に、心にかかわる習慣で効果を発揮します。毎日の気分を記録しておけば、慌ただしい時期でも自分の本当の調子とつながっていられます。短い感謝の習慣にも、それ自体の裏付けがあります。Robert EmmonsとMichael McCulloughの2003年の研究では、週1回の感謝日記が幸福感と楽観性を高めました。書くことはストレス下でも力を発揮します。James Pennebakerの1997年の研究では、感情を書き出すことが身体と心の両方の健康指標を改善しました。バタバタした季節にすり減りがちな心の土台を、まさに支えてくれる習慣です。
Nimeaは、この考え方を軸に作られています。毎日の気分チェックと小さな習慣の記録がセットになっているので、春に始めた習慣は、5月とはまるで違う毎日の中でも居場所を失いません。
夏ならではの感覚を、きっかけに変える
季節と戦うのではなく、季節そのものをきっかけにする手もあります。Lawrence Armstrongらの2012年の研究では、軽い脱水でも気分や集中力が落ちることがわかっており、夏の暑さはそのリスクを高めます。だったら、暑さを利用しましょう。「のどが渇いたら、水を飲んでゆっくりひと呼吸する」「ビーチに腰を下ろしたら、いまの気分を確かめる」。忙しい季節に新しい習慣を上乗せするのではありません。夏がもともと投げてくるものを、頼れる引き金に作り変えるのです。
サボりたくなった日は、その波に乗る
どうしてもやる気が出ない日は、必ずあります。Sarah BowenとAlan Marlattの2009年の研究は、「アージサーフィン」という、衝動や欲求を行動に移さずただ観察する方法を検証し、衝動は強まるどころか弱まることを見つけました。同じスキルは、「今日はやめておこうかな」という気持ちにも使えます。
3回の呼吸をするのに、やる気は要りません。抵抗を感じたら、それに気づき、名前をつけて、それでも2分版だけやる。乱れがちな夏の間、この小さな「観察」の積み重ねは、どんな気合いよりも価値があります。
完璧さより、続けること
夏に生活リズムが乱れるのは、あなたの意志が弱いからではありません。人と会い、よく動く、豊かな季節の当たり前の一面です。そして研究が指し示す方向は、いつも同じです。習慣は、小さくて、記録されていて、寛容であるほど長続きします。目指すのは、一度も途切れない完璧な夏ではありません。ある日の「続いている」が、呼吸1回でも、気分の記録1件でも、3行の文章でもいい。そうやってウェルネス習慣とつながり続ける夏です。
小さくする。記録する。戻ってくる。この3つを乱れの中でも続けられる場所がほしいなら、Nimea Proを30日間無料で試して、夏のスケジュールが運べなくなったきっかけを、毎日のチェックインに任せてみてください。
参考文献
- Armstrong, L. E., et al. (2012). Mild dehydration affects mood and concentration. Journal of Nutrition.
- Bowen, S., & Marlatt, A. (2009). Urge surfing reduces urges. Psychology of Addictive Behaviors.
- Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Weekly gratitude journaling raised wellbeing and optimism. Journal of Personality and Social Psychology.
- Fogg, B. J. (2019). Tiny Habits. (書籍)
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions, medium-to-large effect (d = 0.65). Advances in Experimental Social Psychology.
- Harkin, B., et al. (2016). Monitoring progress increases goal attainment. Psychological Bulletin.
- Lally, P., et al. (2010). Habits take a median of 66 days to become automatic (range 18–254). European Journal of Social Psychology.
- Pennebaker, J. W. (1997). Expressive writing improved physical and mental health markers. Psychological Science.
- Wood, W., et al. (2002). About 43% of daily actions are habitual, performed in the same context. Journal of Personality and Social Psychology.